日本共産党綱領/綱領第3章解説

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三、二一世紀の世界

引用元 https://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/Koryo/

第3章は世界の動きです。戦争が終わって変わったのは日本だけではありません。世界も大きく変わりました。どのように変わったのでしょうか?見てみましょう。

(七)二〇世紀は、独占資本主義、帝国主義の世界支配をもって始まった。この世紀のあいだに、人類社会は、二回の世界大戦、ファシズムと軍国主義、一連の侵略戦争など、世界的な惨禍を経験したが、諸国民の努力と苦闘を通じて、それらを乗り越え、人類史の上でも画期をなす巨大な変化が進行した。

 多くの民族を抑圧の鎖のもとにおいた植民地体制は完全に崩壊し、民族の自決権は公認の世界的な原理という地位を獲得し、百を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家となった。これらの国ぐにを主要な構成国とする非同盟諸国会議は、国際政治の舞台で、平和と民族自決の世界をめざす重要な力となっている。

 国民主権の民主主義の流れは、世界の大多数の国ぐにで政治の原則となり、世界政治の主流となりつつある。人権の問題では、自由権とともに、社会権の豊かな発展のもとで、国際的な人権保障の基準がつくられてきた。人権を擁護し発展させることは国際的な課題となっている。

 国際連合の設立とともに、戦争の違法化が世界史の発展方向として明確にされ、戦争を未然に防止する平和の国際秩序の建設が世界的な目標として提起された。二〇世紀の諸経験、なかでも侵略戦争やその企てとのたたかいを通じて、平和の国際秩序を現実に確立することが、世界諸国民のいよいよ緊急切実な課題となりつつある。

 これらの巨大な変化のなかでも、植民地体制の崩壊は最大の変化であり、それは世界の構造を大きく変え、民主主義と人権、平和の国際秩序の発展を促進した。

まず一つ目は植民地体制の崩壊です。戦争中は大国が多くの植民地を持っていましたが、それらの国々が独立して、主権国家となりました。これは大きな変化ですね。日本政府はアメリカの顔色ばかり見ていますが、世界を動かしているのはアメリカだけではありません。小さな国々も世界を変えるため、力を発揮するようになります。後述するように、核兵器禁止条約の成立はこれら新たに主権国家となった国々が中心となって作り上げたものです。

(八)一九一七年にロシアで十月社会主義革命が起こり、第二次世界大戦後には、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの一連の国ぐにが、資本主義からの離脱の道に踏み出した。

 最初に社会主義への道に踏み出したソ連では、レーニンが指導した最初の段階においては、おくれた社会経済状態からの出発という制約にもかかわらず、また、少なくない試行錯誤をともないながら、真剣に社会主義をめざす一連の積極的努力が記録された。とりわけ民族自決権の完全な承認を対外政策の根本にすえたことは、世界の植民地体制の崩壊を促すものとなった。

 しかし、レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ。「社会主義」の看板を掲げておこなわれただけに、これらの誤りが世界の平和と社会進歩の運動に与えた否定的影響は、とりわけ重大であった。

 日本共産党は、科学的社会主義を擁護する自主独立の党として、日本の平和と社会進歩の運動にたいするソ連覇権主義の干渉にたいしても、チェコスロバキアやアフガニスタンにたいするソ連の武力侵略にたいしても、断固としてたたかいぬいた。

 ソ連とそれに従属してきた東ヨーロッパ諸国で一九八九~九一年に起こった支配体制の崩壊は、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義の破産であった。これらの国ぐにでは、革命の出発点においては、社会主義をめざすという目標が掲げられたが、指導部が誤った道を進んだ結果、社会の実態としては、社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会として、その解体を迎えた。

 ソ連覇権主義という歴史的な巨悪の崩壊は、大局的な視野で見れば、世界の平和と社会進歩の流れを発展させる新たな契機となった。それは、世界の革命運動の健全な発展への新しい可能性を開く意義をもった。

世界の話ということで、ここに書くしかなかったんでしょうが、なぜか戦前に戻ります。

世界史の中に「社会主義を目指す国」が登場します。旧ソ連などがそうです。「目指す国」であって、実現はしていないのがポイント。目指していた。目指していたのだけれども、結局のところ社会主義とは無縁の覇権主義の国、独裁国家となり、崩壊してしまいます。これを見て、社会主義は失敗した、過去のものだという人がいますが、まだ実現してもいないのに過去のものになるわけないじゃない。ただ、ソ連が自分の国をこれが社会主義だと宣伝しまくったため、社会主義 = 独裁国家みたいな誤った認識が広がってしまったのは痛いところです。

今、中国が社会主義国家を自称していますが、こちらも香港における民主活動の弾圧、ウイグル自治区での人権侵害、南沙諸島における軍事的挑発などの問題行動が目立っており、覇権主義的性格が浮き彫りとなっています。日本共産党は昔は中国を社会主義を目指す国と見ていたのですが、これら一連の事態を鑑み、「もはや社会主義を目指す国とは言えない」と評価しました。

なお、この評価は昨今問題となっている排外主義(ヘイト)に加担するものではなく、中国に対しては今後も道義に立った対応をとっていくことを表明しています。

(九)植民地体制の崩壊と百を超える主権国家の誕生という、二〇世紀に起こった世界の構造変化は、二一世紀の今日、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめている。

 一握りの大国が世界政治を思いのままに動かしていた時代は終わり、世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつある。諸政府とともに市民社会が、国際政治の構成員として大きな役割を果たしていることは、新しい特徴である。

 「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ(広島・長崎をくりかえすな)」という被爆者の声、核兵器廃絶を求める世界と日本の声は、国際政治を大きく動かし、人類史上初めて核兵器を違法化する核兵器禁止条約が成立した。核兵器を軍事戦略の柱にすえて独占体制を強化し続ける核兵器固執勢力のたくらみは根づよいが、この逆流は、「核兵器のない世界」をめざす諸政府、市民社会によって、追い詰められ、孤立しつつある。

 東南アジアやラテンアメリカで、平和の地域協力の流れが形成され、困難や曲折を経ながらも発展している。これらの地域が、紛争の平和的解決をはかり、大国の支配に反対して自主性を貫き、非核地帯条約を結び核兵器廃絶の世界的な源泉になっていることは、注目される。とくに、東南アジア諸国連合(ASEAN)が、紛争の平和的解決を掲げた条約を土台に、平和の地域共同体をつくりあげ、この流れをアジア・太平洋地域に広げていることは、世界の平和秩序への貢献となっている。

 二〇世紀中頃につくられた国際的な人権保障の基準を土台に、女性、子ども、障害者、少数者、移住労働者、先住民などへの差別をなくし、その尊厳を保障する国際規範が発展している。ジェンダー平等を求める国際的潮流が大きく発展し、経済的・社会的差別をなくすこととともに、女性にたいするあらゆる形態の暴力を撤廃することが国際社会の課題となっている。

核兵器禁止条約の成立は小さな国々や市民社会の力によって成立しました。アメリカ等の大国は逆に条約成立を妨害する側に回りました。といっても、会議の場で意見を表明するのではなく、議場外でロビー運動をしていただけのようですが。大国だけが世界を動かす時代は終わろうとしています。

では、日本はどういう態度を取ったのか?恥ずかしいことに日本は唯一の被爆国でありながら、政府の代表は核兵器禁止条約の会議には出席しませんでした。日本から出席したのは核廃絶のため活動している市民の皆さん。日本共産党の代表団は市民社会の一員として出席しました。

(一〇)巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾は、現在、広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、くりかえす不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊、植民地支配の負の遺産の重大さ、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにでの貧困など、かつてない大きな規模と鋭さをもって現われている。

 とりわけ、貧富の格差の世界的規模での空前の拡大、地球的規模でさまざまな災厄をもたらしつつある気候変動は、資本主義体制が二一世紀に生き残る資格を問う問題となっており、その是正・抑制を求める諸国民のたたかいは、人類の未来にとって死活的意義をもつ。

 世界のさまざまな地域での軍事同盟体制の強化や、各種の紛争で武力解決を優先させようとする企て、国際テロリズムの横行、排外主義の台頭などは、緊張を激化させ、平和を脅かす要因となっている。

 なかでも、アメリカが、アメリカ一国の利益を世界平和の利益と国際秩序の上に置き、国連をも無視して他国にたいする先制攻撃戦略をもち、それを実行するなど、軍事的覇権主義に固執していることは、重大である。アメリカは、地球的規模で軍事基地をはりめぐらし、世界のどこにたいしても介入、攻撃する態勢を取り続けている。そこには、独占資本主義に特有の帝国主義的侵略性が、むきだしの形で現われている。これらの政策と行動は、諸国民の独立と自由の原則とも、国連憲章の諸原則とも両立できない、あからさまな覇権主義、帝国主義の政策と行動である。

 いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている。

 その覇権主義、帝国主義の政策と行動は、アメリカと他の独占資本主義諸国とのあいだにも矛盾や対立を引き起こしている。また、経済の「グローバル化」を名目に世界の各国をアメリカ中心の経済秩序に組み込もうとする経済的覇権主義も、世界の経済に重大な混乱をもたらしている。

 軍事的覇権主義を本質としつつも、世界の構造変化のもとで、アメリカの行動に、国際問題を外交交渉によって解決するという側面が現われていることは、注目すべきである。

 いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。アメリカと他の台頭する大国との覇権争いが激化し、世界と地域に新たな緊張をつくりだしていることは、重大である。

アメリカが世界の超大国として、軍事力を誇示しており、それが平和を壊す原因となっています。結局、軍事力は使わなければ意味がないので、先制攻撃戦略をとることになります。

(一一)この情勢のなかで、いかなる覇権主義にも反対し、平和の国際秩序を守る闘争、核兵器の廃絶をめざす闘争、軍事同盟に反対する闘争、諸民族の自決権を徹底して尊重しその侵害を許さない闘争、民主主義と人権を擁護し発展させる闘争、各国の経済主権の尊重のうえに立った民主的な国際経済秩序を確立するための闘争、気候変動を抑制し地球環境を守る闘争が、いよいよ重大な意義をもってきている。

 平和と進歩をめざす勢力が、それぞれの国でも、また国際的にも、正しい前進と連帯をはかることが重要である。

 日本共産党は、労働者階級をはじめ、独立、平和、民主主義、社会進歩のためにたたかう世界のすべての人民と連帯し、人類の進歩のための闘争を支持する。

 なかでも、国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、独立と主権を侵害する覇権主義的な国際秩序かの選択が、問われている。日本共産党は、どんな国であれ覇権主義的な干渉、戦争、抑圧、支配を許さず、平和の国際秩序を築き、核兵器のない世界、軍事同盟のない世界を実現するための国際的連帯を、世界に広げるために力をつくす。

 世界史の進行には、多くの波乱や曲折、ときには一時的な、あるいはかなり長期にわたる逆行もあるが、帝国主義・資本主義を乗り越え、社会主義に前進することは、大局的には歴史の不可避的な発展方向である。

資本主義は人類がたどり着いた最終地点なのでしょうか?

市場経済に全てを任せて、何もかもうまくいくわけない、というのはうすうす皆さんも感じておられることがと思います。今、アメリカでアンケートをとると、社会主義の方がいいと答える人が半数近くいるそうです。資本主義の中心地とも言えるアメリカでこのような現象が起きているのは何故なのでしょうか?

資本主義では解決できない問題が浮き彫りになってきています。人類はやがて資本主義を乗り越えて次の時代、社会主義・共産主義の時代を迎える。日本共産党はそのように考えています。