日本共産党綱領/綱領第5章解説

提供:JcpNanseI

五、社会主義・共産主義の社会をめざして

引用元 https://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/Koryo/

第5章はいよいよ共産主義の社会についてです。日本共産党では社会主義も共産主義も同じような意味合いで使われることが多いので、並列で書いています。昔は別々の意味合いを持たせていたらしいですが、最近ではそんなに気にしなくなったようです。

(一六)日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。

 社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。

 生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす。

 生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。

 生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的な発展の条件をつくりだす。

 社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受けつがれ、いっそう発展させられる。「搾取の自由」は制限され、改革の前進のなかで廃止をめざす。搾取の廃止によって、人間が、ほんとうの意味で、社会の主人公となる道が開かれ、「国民が主人公」という民主主義の理念は、政治・経済・文化・社会の全体にわたって、社会的な現実となる。

 さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される。「社会主義」の名のもとに、特定の政党に「指導」政党としての特権を与えたり、特定の世界観を「国定の哲学」と意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁であり、きびしくしりぞけられる。

 社会主義・共産主義の社会がさらに高度な発展をとげ、搾取や抑圧を知らない世代が多数を占めるようになったとき、原則としていっさいの強制のない、国家権力そのものが不必要になる社会、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会への本格的な展望が開かれる。

 人類は、こうして、本当の意味で人間的な生存と生活の諸条件をかちとり、人類史の新しい発展段階に足を踏み出すことになる。

共産主義 = 私有財産の否定という認識の人が結構いると思いますが、日本共産党はそんな社会は目指していません。そもそもそんな社会で誰が得をするのでしょうか?ここにも書いてあるとおり、社会化を目指しているのは生産手段であり、生活手段の社会化は目指していません。

「生産手段の社会化」とは具体的にどのようなものなのか?これは気になるところですが、綱領には書かれていません。ただ、社会主義を目指そうとして失敗した悪い例は、ソ連やら中国やらがいろいろやらかした歴史がありますので、そんな社会にはしないということが、この章には明記してあります。

過去に社会主義を目指そうとした国は、覇権主義や独裁政治となっていきました。それはなぜかというと、民主主義の仕組みが未成熟だったり、経済力がなかったりと、社会的に遅れた状態から社会主義の道に足を踏み出そうとしたために失敗したというのが日本共産党の見解です。日本では議会制民主主義が確立しています。経済力もあります。それを土台に次の社会を切り開くことを目指すのです。

なので、共産党が政権を取っても、他の政党を全て解散して独裁政治をしたりするようなことはしません。議席を多数取った政党が政権与党となって政治を進める、この今の民主主義の仕組みは守ります。

(一七)社会主義的変革は、短期間に一挙におこなわれるものではなく、国民の合意のもと、一歩一歩の段階的な前進を必要とする長期の過程である。

 その出発点となるのは、社会主義・共産主義への前進を支持する国民多数の合意の形成であり、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力がつくられることである。そのすべての段階で、国民の合意が前提となる。

 日本共産党は、社会主義への前進の方向を支持するすべての党派や人びとと協力する統一戦線政策を堅持し、勤労市民、農漁民、中小企業家にたいしては、その利益を尊重しつつ、社会の多数の人びとの納得と支持を基礎に、社会主義的改革の道を進むよう努力する。

 日本における社会主義への道は、多くの新しい諸問題を、日本国民の英知と創意によって解決しながら進む新たな挑戦と開拓の過程となる。日本共産党は、そのなかで、次の諸点にとくに注意を向け、その立場をまもりぬく。

(1)生産手段の社会化は、その所有・管理・運営が、情勢と条件に応じて多様な形態をとりうるものであり、日本社会にふさわしい独自の形態の探究が重要であるが、生産者が主役という社会主義の原則を踏みはずしてはならない。「国有化」や「集団化」の看板で、生産者を抑圧する官僚専制の体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない。

(2)市場経済を通じて社会主義に進むことは、日本の条件にかなった社会主義の法則的な発展方向である。社会主義的改革の推進にあたっては、計画性と市場経済とを結合させた弾力的で効率的な経済運営、農漁業・中小商工業など私的な発意の尊重などの努力と探究が重要である。国民の消費生活を統制したり画一化したりするいわゆる「統制経済」は、社会主義・共産主義の日本の経済生活では全面的に否定される。

日本共産党は今の選挙による民主主義を通じて社会的変革を実現しようとしています。武力による革命ではありません。過去の革命を起こした国では、少なからず武力が用いられ、多くの血が流れました。しかし、そうやってつくられた社会は、どこか歪んだものが残り、結局崩壊の道をたどりました。

日本共産党の社会変革は国民の合意を経て実現していくことになります。

社会主義・共産主義の社会では生産手段が社会化されると上で書きました。社会化といっても、それは政府が画一的に「これをやりなさい」、「あれをやりなさい」と国民に命令することではありません。それは「国民が主人公」の社会を作るという共産党の理念にも反しているのでNGです。

もっとも、国民の合意を経てひとつひとつ作り上げていった社会がそんな乱暴な社会にはならないでしょう。

(一八)これまでの世界では、資本主義時代の高度な経済的・社会的な達成を踏まえて、社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験はなかった。発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、二一世紀の新しい世界史的な課題である。

 発達した資本主義国での社会主義的変革は、特別の困難性をもつとともに、豊かで壮大な可能性をもった事業である。この変革は、生産手段の社会化を土台に、資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力、経済を社会的に規制・管理するしくみ、国民の生活と権利を守るルール、自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験、人間の豊かな個性などの成果を、継承し発展させることによって、実現される。発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である。日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい。

 日本共産党は、それぞれの段階で日本社会が必要とする変革の諸課題の遂行に努力をそそぎながら、二一世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくすものである。

社会主義的変革を実現するためには

  • 資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力
  • 経済を社会的に規制・管理するしくみ
  • 国民の生活と権利を守るルール
  • 自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験
  • 人間の豊かな個性

が必要です。人任せでは達成できない項目があるのがポイントですね。

未来社会は、特定の人間だけでなく、みんなで作っていくものです。みんなが幸せに暮らせる社会を一緒に作っていきましょう。